03 - side D -

歓楽街の人ごみ。
ありふれたいつもの光景の中、明らかに素行の良くない若者の集団が下げたズボンの裾を引きずる様にして町を闊歩している。
そこにまた、一人の青年が現れた。
有名な進学校の制服をきっちりと着こなしており、先程の集団とはまったく縁がないように見える。が、その青年が東口の階段から降りてくるのに気づいた集団は、だらだらとしていた居住まいを一瞬にして直し、青年に向かって頭を下げた。
それを受けた青年は、ただ気弱に笑ってその場を離れていった。

あの集団を見ると、酷い飢餓感に襲われる。大切な親友だった人物…――光をこんなに思い出すのに、もう光はあの中にいないのだ。
あんなふうに、目的のない若者達をそのカリスマ性で束ねていた光。空を飛びたいなんて馬鹿なことを言って笑わせるから、いつの間にか自分はパイロットを目指していた。もう少し待ってくれれば、空につれてってやれたかもしれないのに、光は一人で飛んでいってしまった。向こう見ずなくせに、人一倍寂しがり屋だった光のことだから、今も一人で泣いてるんじゃないかと心配になる。この地上に繋ぎ止めておけないのなら、せめて一緒に逝ってやれば良かったんだろうか。


「すごいね、真面目な顔して番長なんだ?」
光を思い出してやるせなくなり、いつの間にか公園に足を運んでいたようだ。力なくベンチに腰を下ろしていた所に、不意に声を掛けられ振り返ると、金髪の男が笑みを浮かべて直ぐ背後に立っていた。その姿に一瞬はっとする。鋭い目つきの癖に妙に子供っぽく笑う笑い方が、光に似ていたからだ。
「……別に、俺の力じゃない」
その笑顔から逃れるように俯いて視線を外し呟くと、男は楽しそうに笑みを深める。
「知ってるよ、桐谷息吹(きりたに いぶき)。お前がヒカリの彼氏だったから、みんな未だにお前を崇めてる」
息吹は先程の自分の思考に激しく後悔した。光はこんな下世話なことは死んでも口にしない。
光との関係を踏みにじられた気がして無性に腹が立った。
「煩い、誰だお前」
「Eveの秘密を知ってるヒト」
腹の立つ男は、憎らしいほど綺麗な顔をして笑う。
「ヒカリがやった悪行を、全力でもみ消してたのがEve…お前だよね? 法の網目潜ったり、ヒカリの手下動かして圧力かけたり、色々やってたみたいだけど、一番脱帽なのがその情報操作能力…個人で良くあそこまで出来たもんだ」
どうやったんだ?と男は首をかしげた。
犯罪をしている自覚はあった。けれど光を守るためにはしょうがなかったし、何よりばれない範囲でやっているという自信があった。光が死んでから一年が経とうとしている。今更こんな風に面と向かって自分の情報が漏れていると突きつけられるとは思わなかった。怖くなって無意識に逃げようとした息吹に向かい、男は今まで浮かべていた笑みを一瞬にして消して、氷点下の低い声を出した。
「何の後ろ盾も無いガキがあれだけ派手にやってりゃ俺みたいなのが寄って来るんだよ。肝に銘じときな」
地を蹴って走り出す。追ってこないことが逆に怖かった。
お前なんていつでも見つけ出せる。そう言われた気がした。


「やっぱすごいな、息吹は」
そう言って背後から懐いてくる光に、息吹はキーボードを叩きながら溜息をついた。
「光…。お前もいい加減にすぐ手を出すのやめろよ。
 たまたま相手の親御さんに賄賂贈与の弱みがあったから良い物の、いつか絶対訴えられるぞ」
今作成したメールは、そんな犯罪の一部始終が認められている。この情報を手に入れるために、もう一週間はろくに休息が取れていなかった。やっとの思いで書き上げたメールを、光を訴えると息巻いていた相手に送りつけるのだ。さぁどうぞ、後はご自由に。自分の悪行を裁くための法廷をわざわざを用意してくれるんなら、次の選挙では一票投じてあげよう。流石綺麗な政治を謳った政治家だねって。
「しょうがねーじゃん。あっちから喧嘩売ってきたんだぜ?」
息吹の思案を知ってか知らずか、勝手に背後に圧し掛かり、スキンシップを強要する光。
「それに、俺にはEveがいるから良いんだ」
「イヴ?」
「そう、Eve。キリスト教で言うところの運命の女だな。……俺のEve」
そう言って背中に頬を摺り寄せてくる。程よい暖かさが心地良よかった。しかし息吹は椅子を回して相手を引き剥がした。
「…ふざけるな。何で俺がお前の女にならなきゃならないんだ」
「だってお前イヴじゃん。あ、そうだ。かっこいいからこのメールの差出人Eveにしとこーぜ」
「息吹だ!…つーかマジでふざけんな」
そう言って止めようとするも、無邪気な光は辞めようとしなかった。
「いーだろー? どうせ俺の関係者がやってるってことはバレバレなんだからさぁ。やっぱ、運命の女は名を残さねぇとよ」
海賊だって自分の女の名前を船に刻んだんだ、なんて笑いながら、メールの送信ボタンを押してしまう。
  光に貰った、Eveの名前。
  今は、ネットの世界でその名前だけが一人歩きをしているらしい。


  この街は廃墟のようだ。こんなにも賑やかなのに、時々そう思う。
全てがめまぐるしくて、この裏路地もあの階段も、思い出を宿したままにぬくもりだけが消えていくのだ。
「…息吹さん」
不意に、背後から遠慮がちな声が掛かった。
振り返ると、ガタイが良く、目つきの鋭い男が一人。
光の舎弟で、確か名前を久下と言った。今は光の後を次いで少年たちのグループのトップに立っている。
そんな男だから、普段から荒々しい噂が堪えないのだが、今日は顔に痛々しい青あざを拵えていた。
「どうしたんだ?」
青あざと、それから自分に何の用かと。そんな意味を含めて問いかける。
「ここじゃ話しにくいんで、ちょっと」
あまり関わりあいたくなかったが、面と向かって招かれてしまえば仕方ない。
久下の後について大人しく歩き出す。
自然と、久下のブルゾンの背面に施された、竜巻を従えた髑髏の刺繍が目に入ってしまう。
光の死後、もうずっと目にしていなかったWEATHERの紋章だ。


「視線感じるかもしれないっすけど、それは俺らの仲間なんで。気にしないで下さい」
喫茶店に場所を移すと、久下がすまなそうにそう言った。実の所まったく視線などに気づいていなかった息吹は、なんとなく嫌な気分になって眉を顰めた。
「何があった」
「…息吹さん、最近何ともありませんか?」
久下は口元の傷が痛むのか、喋り辛そうにしていた。
「何ともって、俺はこのとおり無事だよ。お前のほうが重症だろ」
「…なら良いですけど。気をつけてください。昨日、変な男が来て息吹さんのこと色々聞いてきました。申し訳ないです。奴は、今大抵の事は把握してます」
「…喋ったのか」
「すみません」
「…光のことも?」
「……すみません」
腹が立った。住所等、個人情報の類はどうでもいい。
光だ。光とのことだ。自分ですら反芻したくないことを、なぜ他人に侵略されなければならないのだ。
「あいつ、妙に光さんと息吹さんの関係に拘ってました。息吹さん狙いなら、俺らは全力で貴方を守りたいと思ってます」
久下がまだ何か喋っていたが、そんなことはどうでも良かった。
「…放っておいてくれ」
卑屈な台詞が口をついて出た。
「面倒事は、避けたい」
そんな言葉に、久下は困ったような顔をする。
「面倒事、って…。放っておいたら余計面倒な事になりそうだから言ってるんです。あの男、絶対普通じゃ…」
「何も考えたくないんだ!」
久下が心から親身になってくれていることは分かったが、それがうっとおしくて半ば叫ぶように言葉を遮った。驚いて口をつぐんだ久下が目を見開いてこちらを見ている。その視線から逃れるように、視線を俯かせ、今度は呟くように声を漏らす。
「そいつが俺に何かするつもりなら、いっそ殺してくれたって良いくらいだ」
腹の奥に、憤った気持ちが澱の様に溜まっていく。
「息吹さん…。あんた…」
久下が搾り出すようにして言葉を紡いだ。口元の傷から来る痛みとは別の意味で、辛そうに顔を歪めている。
「確かに光さんがいなくなったことはすげー悲しいよ。光さんが死ぬ間際にあんたを頼ってた事も事実だ。だけど光さんが死んだのはあんたの所為じゃないだろ?」
「……」
「光さんが可哀想だ。…そりゃ、あんなことになっちまったけど、あの人は…!」
「お前に何がわかるんだよ」
吐き捨てるようにそう言ってやると、久下は射ぬかれたように動きを止め、酷く悲しそうに顔を歪めた。
刹那、こちらを見るのを止めてうつむく。
しかし次に視線を戻した時には、先の表情とは一転、息吹を嫌悪するような目つきになった。
「いつまでもそうやって勝手に思ってろ。光さんが死んだのは自分の所為だってずっと腐ってろよ。いくら光さんが大事にしてた人だからって、生きるつもりもないふぬけ野郎の為に身体張るほど俺だって暇じゃない」
ようやく引いてくれた、そう思って吐息と共に肩から力を抜いた瞬間、一層低い声が久下から放たれた。
「光さんはそんなこと、絶対思っちゃいないだろうけどな」
そう言って久下は席を立った。久下の悲しそうな顔も、怒りも、意味が解らない。何も知らない癖に勝手な事を言うなと思う。光が死んだ直接の原因は確かに自分では無いかもしれない。けれど、光は自分に助けを求めていた。自分はそれに気づいていて、その上で救ってやれなかったのに、光が自分を怨んでいないなんて何処に確証があるんだ。


雨の降る夜だったと思う。
「息吹」
電話越しに、光の少し掠れた声が聞こえてきた。
「光、どうした?」
「うーん、ちょっとな…」
小さく、笑ったような気配がする。
「お前の声が、聞きたくて」
「何言ってんだ。お前が、しばらく忙しいからって言ったんだろ。なんだったら、今から会いに行こうか?」
「…会えないんだ」
「え?」
「会えない」
電話の声が途切れた。沈黙の中に、じわりと、雨染のように湿っぽいものが広がる。
「光、お前今何処にいる」
「天国?」
「は?」
「わかんない、地獄かも」
「光!!」
「冗談だ」
また、光が小さく笑った。しかし、息吹がそう思っただけだ。
電話の向こうで小さく掠れた吐息は、もしかしたら泣いているからかもしれなかった。
「息吹ー…。会いたい」
「だから、会いに行くって」
「駄目なんだ、俺、今……すっげぇ情けなくて。こんなの、お前に見せたくねぇ」
今度は、確実に鼻を啜る気配がした。泣いてる。
「何言ってんだ」
でも、それを光に言ってはいけないと思った。
光が見せたくないと言うのだ。気づかない振りをしてやるのが筋だろう。
「お前がかっこいい時が今まであったかよ。俺の前じゃ、馬鹿な事ばっかり喋ってるじゃないか」
「酷ぇ」
光の声に笑いが混じった。
「だから、いつでも呼び出せ。会いに行ってやる」
「……なんでお前そんなに優しいわけ」
「友達だろ?」
「でもさ、お前は俺のEveにはなってくれないんだろ?すげぇ寂しいよ」
そう言って電話は切れた。
後には規則正しい電子音だけが残る。
言い知れぬ不安を感じた。
熱を孕んだ様な光の話し方。いまいち要領を得ない会話。涙声。
今となっては、なぜあの時追求しなかったのかと後悔が残るばかりだ。
けれど、その時は考えたくも無かったのだ。
光がどうにかなってしまうなんて。

二度目の久々の電話で、光の消え入りそうな声が助けてと告げた。
それで息吹の家に向った息吹は、生命の限界と言うものを見せられた気がした。
朽ち果てた木肌のように、浅黒くカサ付いた肌。
淀んで焦点の合わない瞳。
乾いてヒビ割れの入った唇。
暗い部屋の片隅で蹲っていた光に顔を挙げさせると、息吹を認識したそれらに僅かな表情が乗る。
「ぃ…ぶき…」
「光、何をした?」
強く肩を握ぎって揺さぶると、光の瞳に怯えが混ざる。
「薬、無い、と…苦しくって、それで、俺…」
「馬鹿!!」
目の前の光を殴ってやりたい衝動に駆られる。
でも、限界まで乾いた身体はそれをしたら折れてしまいそうだ。
やっとの思いで湧き上がってくる怒りを飲み込んで、息吹は光を静かに見据えた。
「……会いに行ってやるって言ったじゃないか…」
光は答えない。ただ、ぼんやりとした無気力な視線を向けてくるだけだった。
「…どうして、麻薬になんか頼った?俺に言わなかった?」
「…お前と俺じゃ、思いを共有できないからさ」
その言葉にまた、怒りの炎が舞い上がる。
「なんでだよ!?ずっと友達やってきたじゃないか!!」
「だから、だよ」
光が、苦しそうに咳き込んだ。掴んでいた、痩せた肩が大げさに上下する。
「…息吹が、好きだ」
乾燥した光の声が、微かに熱を纏う気配がした。だけど、気づかぬふりをする。
「俺も好きだよ。」
ふ、と小さく、光の笑う気配がした。
「ウソツキ」
真意を測ろうと光を見るが、その表情は恐ろしいほど褪せていた。
何も思っていないのか、それとも全てを諦めているのか、諦観に満ちた落ち窪んだ瞳を、ただただ淡々と息吹に向けている。
「お前と、セックスしてぇ」
そう言われて、何も返事が出来ないでいた。光がそれを望むなら、それをしてやっても良いような気がする。
けれど、今彼に必要なのはそんなことより病院での治療だと思った。
「お前、今正気じゃないんだよ」
そんな風に言ってしまった。今にして思えば光が正気ではないとしても、極限状態で搾り出すように紡いだ言葉を軽んじるのは良くなかった。それなのにどうして、そんな台詞を選んでしまったんだろう。
「な、一緒に病院行こう?」
そう言って光に肩を貸し、無理やり立ち上がらせた。
抵抗するかと思ったが、光は以外にも素直に従い、ただ一言、こんな風に零しただけだった。
「最期に、正気でお前に会えてよかった」
色斑ができ、粉が吹いた頬を、涙が一筋静かに伝う。
それを見て、息吹も泣きそうになる。支えている光はずいぶん軽くなってしまった。
「最期とか、言うなよ。大丈夫、きっと良くなる」


それから数日後、光は病院の窓から飛んだ。
体もボロボロだったが、それ以上に精神を病んでいたらしい。
ベッドから自力で立ち上がるなんて誰も思わないほど衰弱していたのに、一人で旅立ってしまった。


光は昔から情緒不安定な気来があった。
親が虐待をしていたらしく小さな頃はよく痣を作っており、そしていつも空腹だった。家が近かった息吹はそれを見かねて己の家に光を招き入れたのだ。やがて成長し随分落ち着いたがそれでもどこか愛情に飢えている風で、人懐っこく面倒見が良く、それでいて息吹以外の人間には一線を引いていた。強気の自分しか見せたくないようだった。
そんな所が不良集団の頭になる資質だったのだが、同時に薬に溺れる資質でもあったのだろう。
自身が売人となる序に薬に手を出し、転がるように落ちて行ったらしい。


「それでなんでお前の所為だと思うかねぇ。弱い奴が負け犬宜しく死んだだけじゃね?自業自得だ」
いつの間にか、この前の男が傍に立っていた。相変わらず人の神経を逆なでする話し方をする。
「お前に何がわかるんだ」
平気で人を傷つけるお前に、大切な友人に死なれた人間の気持ちが解る物か。
「…何って、全部」
ところが目の前に立つ男は作り物のように綺麗な顔で自信たっぷりに言い切った。
「大事な友達に何かしてやりたかった。でも何も出来なかった。後悔してる。そうだろう?…その気持ちのやり場が欲しくないか?」
杓子定規だと思った。
確かに間違ってはいない。形式としては理解されているが、それで全部と言われても満足などかった。しかし、その後に続いた
「気持ちのやり場」と言う単語には今の自分にとって妙な魅力があった。
光を失った悲しみや何も出来なかった自分への嫌悪がもうずっと渦巻いて胸に溜まり、苦しくて堪らなかったのだ。
「ヒカリを殺したのはお前じゃない。麻薬売買の仲介をしてる浅井って男だ」
具体的に名前を出され、思わず喉が鳴った。アザイと言う名前が一瞬で耳にこびり付く。
「業者から薬を買って、それを素人売人に降ろして自分はマージンで食ってる下種だ。ヒカリも奴お抱えの素人売人の一人。
 そいつがヒカリに薬を教えたんだ。
 奴は薬の怖さをよーくしってるが、売人自体も嵌まってくれりゃ奴の取り分が上がるから止めてやったりしない。
 むしろ大歓迎ってな。俺は今そいつを追ってるんだけど…」
そこまで言い切って己を見つめる青い瞳が甘く細められた後で、形の良い唇が抗いがたい誘惑を紡ぐ。
「一緒に浅井を地獄に落とさねぇ? ヒカリの敵を取ってやろうぜ」
この男の目的が自分の技術にあって、それを利用するために都合の良い言葉を選んでいるのは解っていた。それでも。
「…乗った」
その言葉に縋る。
また、光の気持ちから目を背けた時と同じように逃げているのかも知れない。
けど、自分を憎む以外に何かしたかった。
こうして息吹はshadeへの第一歩を踏み出す事になる。


「いーぶきっ!イブイブ!」
「煩い。甘えても駄目。俺は麻薬関連以外の仕事はしないから。企業の利益絡んだ情報操作なんてまっぴらゴメンだよ」
あれから数年が経って、自分を誘った男の印象はかなり変わった。当初の鋭利な雰囲気は公の物。仕事以外ではまるっきりだらしが無い。今日も己の背に懐いて我侭を言う。そんなところはやはり少しだけ光に似ていた。


浅井の追い詰めはあっけないほど簡単で、今では奴は堀の中だ。
けれども浅井と言う糸口から、バックの組織の全体像が少しだけ見えた。
息吹は今でも、その仕事だけは手伝う事にしている。光の敵を取りたいし、もう二度と同じような子供が出ない事を祈っているのだ。


今己の背に乗っている顔だけは良い男とその相棒は手広く仕事をやっていて、時折行動を共にする自分もその威を借りて名前だけが有名になっていた。ただ、自分はパソコンの前で作業したり、足での捜査は面バレを裂けWEATHERのメンバーに力を借りることが多いのでやはり名前だけが一人歩きしている気がする。光に貰った「Eve」の名前。
運命の女だと笑った光。女だというのは癪だが、知恵の林檎を先に食べて楽園を壊したのはEveだ。
光を殺した奴らが見ている楽園なら、それを壊すのは他の誰でもない自分だと決意してもう4年。
昔とは比べ物にならない規模の大それた情報操作が板についてきた。表向きは穏やかに流れる時の裏で、着実に闇に近づいている。
善悪だけで語ったら、己の行為を悪だと言う人もいるだろう。他人を憎む事で自分を正当化しているだけかもしれない。けれどもう、息吹はそう生きて行くことを決めていた。


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